人の死はいつも突然やってきます。ある程度の目処が付いていたとしても、息を引き取るタイミングまでは予想できません。
そして故人が亡くなったらすぐに行わなければならないことが、葬儀社を手配することです。
葬儀は結婚式のように数ヶ月前からじっくり決めていく儀式ではなく、数十分から数時間の間でさまざまなことを決めなければならないため、手配から準備まで非常に慌ただしくなります。
いざというとき失敗しないために、葬儀社の手配する手順について、電話の仕方から葬儀当日までの流れを解説します。
もくじ
葬儀社とは
葬儀社とは葬儀(葬式)に関すること全般をサポートしてくれる会社です。
サポートの範囲は葬儀社によって異なりますが、お通夜から火葬式までの進行はもちろん、自治体への手続きを一部代行したり、ご遺体を葬儀まで安置したり、お墓や法事に関する部分までも相談できます。
また、一部の葬儀社では呉服屋と提携しているため、喪服のレンタルなども可能です。
近年では生前に自分の死後についての希望や方針を考える終活を行う人が増えているため、中には終活のサポートをしてくれる葬儀社もあります。
サポートの範囲はそれぞれの葬儀社で変わってきますが、基本的には葬儀に関することなら、全般的にサポートしてくれます。
葬儀社を手配するタイミング
葬儀社を手配するタイミングは、一般的には故人が亡くなった直後になります。
そのため、24時間365日電話やインターネットなどで手配を受け付けている葬儀社が多いです。
近年では終活を行う人が増えているため、希望や方針に合わせて生前に予め手配するケースも増加しています。
葬儀社はいつ選ぶ?
葬儀社を手配するタイミングは逝去後が一般的です。しかし、逝去後と生前のどちらのタイミングで選んでも問題ありません。
予め手配している場合でも、逝去後に手配する場合でも、葬儀社はすぐに対応してくれるので、スピーディーに葬儀の話を進めることができます。
なお、近年では終活によって葬儀社を選ぶ人が増えています。生前ならばじっくり葬儀社を比較することができ、予算等も把握しやすいため、葬儀に関する希望がある場合は生前に手配しておいた方がメリットは多いでしょう。
ご逝去から葬儀の手配・当日までの流れ
日本では「墓地、埋葬等に関する法律」第3条によって、亡くなってから24時間以内に火葬することができない決まりになっています。
そのため、亡くなってから火葬するまでの期間は平均で2~3日程度かかります。火葬場の予約具合など状況によっては1週間前後かかるケースもありますが、葬儀社の手配自体は逝去後すぐに行わなければなりません。
では、もしも家族や大切な人が亡くなったとき、どのような流れで葬儀社を手配するか、葬儀までの流れについて解説します。
1. 医師による死亡確認
まずは医師によって、正式に亡くなったことを証明する死亡確認を行います。なお、死亡確認については、どこで亡くなったかによって形式等が変わります。
病院で逝去の場合
病院やクリニックなどの医療機関で亡くなった場合は、担当の医師が死亡を確認します。
死亡確認は基本的に、亡くなった人を診察してきた医師が行います。その際に葬儀や役所への届出に必要な死亡診断書が発行されます。
死亡診断書とは死亡日時や場所、死因などを詳細に記載したものであり、人間の死亡を医学と法律で証明する書類となります。
なお、死亡診断書はさまざまな手続きで必要になるため、受け取ったらすぐに複数枚コピーしておくことをおすすめします。
自宅で逝去の場合
自宅で亡くなった場合は二通りの方法で死亡確認を行います。
在宅医療や通院でかかりつけ医がいる場合は、まずかかりつけ医に連絡しましょう。持病や老衰での死亡が確認されると、死亡診断書が発行されます。
しかし、死因が特定できない場合は検視が行われ、死体検案書が発行されます。死体検案書は死亡診断書と同じ内容のもので、さまざまな手続きで必要になる書類なので、コピーを複数枚とって無くさないように保管しておきましょう。
かかりつけ医がいない場合は、医療機関ではなく警察へ連絡をします。警察が到着後は事情聴取と現場検証が行われ、事件性がないと判断されると監察医から死体検案書を発行してもらえます。
しかし、検視で事件性が疑われると司法解剖が行われ、その手続きや場所移動で数日以上かかります。遺体の状態によってはDNA鑑定が必要で、結果が出るまで10日から1カ月以上かかることもあります。その間、遺体は警察に預けられ、葬式や死亡届が出せません。
2. 葬儀社の手配
死亡確認後に、葬儀社の手配を行います。ご遺体の腐敗が進んだり、医療機関で安置できる時間が短いなどの理由から、逝去後はすぐに葬儀社を手配します。
なお、ほとんどの葬儀社は24時間365日対応しているため、深夜や早朝、年末年始でも電話は繋がります。
逝去後に葬儀社を決める場合は、できるだけ希望に近いプランを提供している葬儀社をインターネットで検索し連絡をしましょう。
葬儀社への電話の仕方
葬儀社を手配する際は、できれば電話をおすすめします。なぜならば、インターネットの申し込みフォームやメールよりも、直接やり取りできる電話の方がスムーズに話を進められるからです。
葬儀社へ手配の電話をする際は、以下の内容を伝えるとスムーズです。
故人と連絡者の情報 | ・故人の名前・連絡者の名前・連絡者と故人の関係・連絡先 |
現場の情報 | ・故人と連絡者の居る医療機関や施設の名前(できれば所在地も)・自宅の場合は住所 |
安置を希望する場所 | ・葬儀社・自宅(戸建てかマンションかなども伝える)・菩提寺 |
時間と場所 | ・葬儀社に来てほしい時間(すぐ~数時間後など指定)・送迎場所(病室や出入口など)・送迎人数(自家用車を利用する場合も伝える) |
3. 遺体の搬送と安置
葬儀社の担当者が現場まで到着した後は、ご遺体を安置する場所まで搬送します。
病院から搬送の場合
病院などの医療機関から搬送する場合は、指定の場所まで葬儀社の担当者が訪れます。
なお、ご遺体を搬送する寝台車には、死亡診断書を所持している人が同乗しなければならないケースもあります。
ご遺体を寝台車に乗せたら、指定の安置場所へ向かいます。
自宅で安置の場合
自宅でご遺体を安置する場合は、自宅まで搬送後、安置場所を整える必要があります。
安置する場所は仏壇の前もしくは畳のある部屋、生前に過ごしていた部屋で、寝かせる布団には清潔なシーツやカバーを使いましょう。
ご遺体はそのまま安置をすると腐敗が進むため、エアコンで部屋の温度を下げ、ドライアイスを使って冷却します。
なお、棺に入れてから自宅で安置する場合もあるため、葬儀社と相談して希望に合った方法を選びましょう。
4. 親族への連絡
ご遺体の安置が完了したら、親族へ連絡を入れましょう。
亡くなった直後の連絡で伝えきれなかったことを伝えたり、さらに広い範囲へ連絡を回します。
5. 死亡届を提出し火葬許可証を受け取る
故人が亡くなったらまずは、各自治体の役場へ死亡届を提出しなくてはなりません。死亡届の提出には、死亡診断書(死体検案書)が必要になります。提出した死亡診断書は戻ってこないため、提出前にコピーをとりましょう。
死亡届を提出すると火葬許可証が発行されます。
ご遺体を火葬する際は、自治体から許可を得る必要があります。自治体から火葬の許可を得た証明として発行されるのが火葬許可証です。
なお、死亡届の提出および火葬許可証の発行は、葬儀社が代行してくれるケースも多いです。
6. 葬儀の準備
ご遺体を安置できたら葬儀の準備が始まります。必要なものを揃えつつ、葬儀社とともに具体的な葬儀の内容を話し合っていきます。
葬儀の日程・内容の決定
まずは葬儀をいつ行うのか、具体的な日程を決めます。葬儀の日程は、火葬場の状況によって変動しますが、亡くなってから2〜5日以内に行われるケースが多いです。
日程が決まったら葬儀の内容を決定します。一般葬、家族葬、一日葬、直葬、無宗教葬、自宅葬、密葬など、どの種類の葬儀にするのか、どのような流れにするのか、どの範囲の関係者まで声をかけるのかを決めて、より適切な内容のプランを作ります。
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各種手配
葬儀の内容が決まったら、必要に応じて各種手配を行います。
例えば僧侶や神父など宗教者を呼んだり、会食で利用するケータリングや仕出し弁当などの手配などです。
葬儀の内容によって必要な手配が異なるため、場合によっては手配が一切不要なこともあります。
7. 通夜
一般葬を行う場合は、まず火葬の前日に通夜を行います。
通夜は故人とともに夜を過ごす儀式ですが、近年では1~2時間程度で終了し、夜通し火の番を行わないケースも増えています。
数時間で終了する場合は1度自宅や宿泊先へ戻り、翌日に再度斎場まで足を運ぶ必要があります。
8. 葬儀・告別式
通夜の翌日の午前中からお昼くらいに、葬儀・告別式を行います。
故人と顔を合わせる最期の儀式であり、告別式が終わるとご遺体は霊柩車で火葬場まで搬送されます。
なお、霊柩車に同行できるのは代表者2名までの場合が多いので、その他の参列者は自家用車等で火葬場まで向かいましょう。
火葬場に到着後は担当者の指示に従って火葬式を行います。火葬が完了するまで1時間半~2時間程度かかるため、その間は控え室で休憩となります。
火葬完了後は骨壺にご遺骨を納めるお骨上げを行い、収骨が完了したら葬儀終了となります。
葬儀社を選ぶときのポイント
近年では従来よりも内容がシンプルで、よりリーズナブルな価格で葬儀を行うことができるようになりました。しかし、リーズナブルな価格とは言え、決して安い金額ではありません。
経済的な負担はもちろんですが、決めなければならないこと、進めなければならない手続きがたくさんある中で葬儀の準備を行わなければなりません。そのため、葬儀社選びに失敗すると希望通りの葬儀ができない可能性があります。
葬儀社選びに失敗しないためのポイントを解説します。
複数の葬儀社から見積もりを取る
生前に葬儀社を決める場合は、希望通りのプランがある葬儀社からパンフレット等を取り寄せ、さらに「このような内容の場合はどのくらいの金額になるのか」と、死後の希望を伝えて見積もりを取りましょう。
逝去後に葬儀社を手配する場合はある程度のプランを決めておき、電話で「一日葬で家族のみで葬儀をする場合のどのくらいの金額になるのか」と、おおよその見積もりを聞いてみましょう。
2~3社ほど比較して、金額やオペレーターの対応に問題のない葬儀社を手配してください。
見積もりを取るときの基本は、生前でも逝去後でも複数の葬儀社から取ることです。よく比較することが、失敗しない葬儀社選びの基本になります。
希望する葬儀内容と予算を明確にする
おおまかでもよいので、どのような葬儀を希望するか決めましょう。その際にある程度の予算も出しておいてください。
・幅広い関係者を呼んで大規模に
・身内だけでゆったり過ごしたい
・簡単に1日で済ませたい
・趣味の音楽で楽しい葬儀にしたい
・色とりどりの花に囲まれた空間にしたい
希望する葬儀内容が決まったら、相場を調べて予算と照らし合わせましょう。
予算内で希望する葬儀内容を実現できるか、難しい場合はどうするかを決めて、より葬儀内容と予算を明確にすることで葬儀社選びに失敗しにくくなります。
過去の葬儀に関する実績や口コミも参考にする
どんな葬儀社もホームページやSNSには評判のよい部分しか明記しません。追加料金などの注意書きが小さな文字で記載されていることもあるでしょう。
葬儀社のホームページやSNSからでは把握できない実態は、実績や口コミを調べるとわかります。
実績が多い葬儀社は、その分ベテランのスタッフも多く、プロとして適切な対応をしてくれる可能性が高いです。例え口コミが見当たらなくても、実績が多ければその分、その葬儀社を信頼して依頼した人が多い証明になるので、信頼度を計るひとつの指標として参考になります。
また、葬儀社のホームページ上ではなく、マップサイトや口コミサイトに投稿された口コミがあればよくチェックしておきましょう。葬儀社が選んだり編集したりできない場所に投稿された口コミは、実際がよくわかる貴重な情報源となります。
葬儀社へ依頼する前に、少しでも実態のわかる情報を探して参考にしてみてください。
葬儀社の手配に関するよくある質問
葬儀社の手配に関するよくある質問をピックアップしご紹介します。
葬儀社の手配は誰がしますか?
葬儀社の手配は一般的に、遺族の代表者として葬儀を執り行う喪主が行います。
喪主は葬儀の中心であり決定権を持つ人なので、葬儀社の手配も喪主が行った方が、伝達ミスもなくスムーズに準備を進められます。
やむを得ない事情によって喪主が葬儀社を手配できない場合は、喪主の意思を明確に伝えられる親族など、関係性の深い人が葬儀社の手配を行いましょう、
葬儀社の手配前に何を準備したらよいですか?
葬儀社の手配前に準備するべきことをまとめて解説します。
死亡診断書のコピー | 死亡届などですぐに必要になるため、もらったらできるだけ早めにコピーをする。 |
希望の安置場所を決める | 葬儀社か自宅かを決める。自宅の場合は、安置できる環境が整っているか確認を忘れずに。 |
葬儀の内容を決める | 葬儀社がさまざまなプランを提案してくれるが、予めある程度は決めておくと失敗しにくい。 |
親族に連絡をする | すぐに駆けつけたいと思っている親族もいる可能性があるため、関係の深い親族から連絡を回しておく。 |
葬儀に関する具体的な内容などは、葬儀社を手配してから決めます。葬儀社を手配する前に準備することは、すぐに決めなくてはならないことをある程度決めたり、必要なものを準備することです。
逝去後すぐに葬儀社を手配しなければならないため、バタバタとしてしまうかもしれませんが、まずはすぐに取り掛かるべきことから少しずつ進めましょう。
まとめ
葬儀社の手配は、逝去後すぐに電話一本で完了します。ただし、葬儀社選びを間違えたり、効率よく準備を進められなかったりすると、希望通りの葬儀ができなくなってしまうかもしれません。
逝去後に葬儀社を手配することが一般的ですが、近年では終活の一環として生前に葬儀社を手配する人が増えています。
逝去後はやるべきことがたくさんあり、短い時間の中で葬儀社を手配しなければならないため、余裕を持って準備を進めるならば生前から手配しておくことをおすすめします。
葬儀社を選ぶ際は、複数の葬儀社から見積もりをとってよく比較すると失敗しにくいです。故人が主役となる最期の儀式ですので、時間がない中でも葬儀社選びはできるだけ慎重に行いましょう。
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