もくじ
嶺北地方の葬儀の特徴と習わしを紹介
嶺北地方は、即日香典返しが一般的で、会葬者数が多い地域です。
福井市の西南、吉田郡には曹洞宗の大本山永平寺がありますが、嶺北地方は全体的に浄土真宗の門徒が多い地域。
そのため、出棺の際の茶碗割りの慣習や友引を避けるといった俗信はあまり見られません。
浄土真宗の場合、葬儀の手伝いは居住する地域の組や班の人たちが、そして通夜には僧侶とは別に、門徒の集まりである講が御詠歌を詠唱しに弔問に訪れます。
浄土真宗の檀家が多く嶺南に比べて葬儀はシンプル
葬儀内の儀式が多い真言宗や曹洞宗とは対照的なのが、浄土真宗です。
他宗派では、故人を浄土へと送り出すための様々な儀式を葬儀でおこなう必要があります。
しかし、亡くなるとすぐに阿弥陀如来が迎えに来て浄土に生まれ変わるとされている浄土真宗ではその必要はなく、葬儀がシンプルと言われる所以です。
嶺北地方の香典返しの基本は商品券3,000円
嶺北地方では香典は即日返し、3,000円分の商品券で一律返礼が一般的です。結果的に、場合によっては半額返し以上となっていることもあります。
嶺北地方の郷土料理|からし麩
元は浄土真宗の報恩講が、葬儀や法事の際に作っていたお麩を使った精進料理です。
福井県名産の地からしに、お酢とみりんをあわせたシンプルな料理は学校給食にも出されており、地元の人にとっての思い出の味でもあります。
地域によっては、お味噌やきゅうりなどのアレンジすることもあり、精進上げに欠かせない一品です。
嶺南地方の葬儀の特徴と習わし
嶺南地方では、自宅、または寺院で葬儀を営むことが多いです。
同じ宗派で集まった講中の活動が盛んであり、通夜の際に喪家に訪れて念仏や御詠歌を詠唱します。
厳しい宗儀に則った葬儀を執り行うことで知られる天台宗や真言宗、そして曹洞宗が多い地域です。
また、この地方の檀家の多くが葬儀儀礼の簡略化をよしとしない向きもあるため、宗派の儀礼に則った立派な葬儀を見ることができます。
漁村地区には、海や豊漁の神様を崇める原始神道による信仰が根底にあるため死穢の観念がとても強く、霊柩車が神社の前を通ることや、船が下を通る日向湖にかかる橋を渡ることを忌み嫌う傾向がありました。
美浜町に残る葬儀の習わし
垣内(かいと)と呼ばれるグループ、班が各町内に組織されており、葬儀の際は班の人たちが手伝います。また、観音講などの講中もあり、地縁関係が強い地域共同体を持ちます。そのため、今も多くの葬送習俗が受け継がれており、火葬場の往復の道順を変える慣習もその一つです。
また、よもぎを棺に納める慣習も時折見られます。
沿岸部では神仏習合が見られ、天台宗または真言宗の葬儀が多いのも特徴です。
葬儀に赤飯が振舞われる
美浜町の安江や海側の菅浜あたりでは、出棺前に茶碗一杯の赤飯をいただく慣習があり、現在では精進落としや引出物に出されることが多いです。
この出立ち膳を、新庄地区では立ち非時と呼んでいます。
長寿で亡くなった方、または曹洞宗の葬式は故人がお釈迦様の弟子入りをするということでおめでたいとの理由からともいわれています。
また、赤飯の代わりに堅パンを引出物にすることもあります。
堅パンは乾パンにゴマを練りこんで薄く四角くしたものです。歯が欠けてしまいそうな程の硬さを持つ堅パンは、地元の人はコーヒーや紅茶などの飲み物に浸していただきます。
故人の胸の上に葬礼刀・剃刀・鉈を置く
浄土真宗以外で、個人を魔物から守る魔除けとして刃物を故人の胸または棺の上に置く民間習俗が見られます。
同じく魔除けとして、棺が安置された天井に天蓋を吊るすところも。
他に、故人が首から下げる頭陀袋に六文銭の紙と枕団子を、そして最近までは故人が女性の場合、縫い針と糸、そしてハサミを入れていました。
友引や子・牛の日の葬式を避ける
友引は親しい者が、子の日と丑の日は後追いと、忌事が続くことが連想されるため、その日の葬式を避けます。
現在でも、全国各地でもっとも多く受け継がれている民間習俗です。
まとめ〜福井県の葬儀は儀式省略せずに手厚く行うことが多い
福井県でも葬儀の簡素化の風潮は高まっています。
しかし、寺院との結びつき・熱心な檀家が多く、故人の弔いを手薄にはしたくはないとの思いが強い地域性から、従来通りの葬送儀礼で葬儀が営まれることの方が多いです。