徳島県の葬儀は阿波踊りでお見送り?お六日法要と県南地方に残る野辺送りの慣習

徳島県の葬儀は阿波踊りでお見送り?お六日法要と県南地方に残る野辺送りの慣習

徳島県は四国八十八か所霊場の発心の地であり全国で最も真言宗の寺院が多く、寺院との繋がりが強い地域です。そして地縁関係で先祖代々強く繋がっている講組が機能している町村が今も多く、昔ながらの葬送儀礼、お六日法要や野辺送りといった慣習が継承されている地域もあります。

また、徳島県といえば「阿波踊り」。「連」と呼ばれるプロの踊り手チームが33連ありますが、連の関係者のみならず一般の人の葬儀でも踊られることがよくあります。徳島県の人々にとって、阿波踊りはお盆の風物詩ではなく、冠婚葬祭といった人生儀礼においても欠かせない存在です。

古くからのしきたりが残る、徳島県の葬儀と葬送習俗を紹介します。


徳島県の葬儀の特徴を紹介

「通夜ー葬儀ー火葬」と、葬送儀礼は一般的な後火葬ですが、県南地方には葬儀前に火葬を行う前火葬(骨葬)の地域があります。

現在でも自宅葬が営まれることが比較的多い地域ですが、通夜は自宅、葬儀は葬祭業者のホール行うケースも多いです。

寺院との結びつきが強く、特に葬儀における儀式を重んじる真言宗が圧倒的に多いため、家族葬であっても宗派の儀礼に則った葬儀が営まれます。

徳島県で家族葬が選ばれる理由の最たるものが、全国でも上位に入る程の深刻な高齢化問題。高齢化に伴い講組や隣組による、地域挙げての従来の葬送儀礼を行うことが困難になり、会葬者数も少なくなるからです。

通夜は親族のみが参加しますが、昨今では葬儀に参列できない人も香典を持って通夜に訪れます。

阿南市など県南地方では通夜に訪れた人たちにお茶菓子や軽くつまめる料理などを用意して振る舞ったり、または通夜振る舞いの代わりに折詰を持たせることも。

隣県の香川県と同じく、通夜振る舞いにうどんが出される地域もあります。

満中陰志(香典返し)は半額返し、四十九日法要後に送られるのが一般的です。

地域によっては3回分の香典を用意

昨今では他地域同様、一つの香典袋にまとめて渡すことが増えていますが、昔ながらの葬送儀礼に則って、3回分の香典を用意する慣習も残っています。

「お通夜(夜伽見舞い)」「葬儀」「お六日法要または初七日法要」(5,000円~10,000円)、それぞれ香典袋を用意して渡す習慣です。

夜伽見舞い(通夜見舞い)

通夜に出席する際に「夜伽見舞い」、いわゆる通夜見舞いとして現金、またはお菓子や気軽に食べられる助六寿司などの料理を持参する習わしがあります。

近年では昔ほど会葬者が集まることがないため、食べ物ではなく現金を包む比率が高いです。

先祖代々から受け継がれている講組(斎講組・徳講組)

現在でも山間部や農村部の一部地域では、およそ10軒一組で構成されている講組と呼ばれる、先祖代々から続く地域コミュニティがあります。

講組は、同じ宗派によって組織されている講中や、地域住民の組織である隣組と構成や相互扶助といった活動内容は同じです。その中に斎講組、または徳講組と呼ばれる葬儀を担当するグループがあります。

一般的に、現在日本各地にみられる講中や隣組は他地域からの転出入といった人の流動がありますが、徳島県の場合、その土地で代々暮らす家同士の繋がり、純粋な地縁関係での結びつきが大変強い土地柄であるため人の流動はめだってありません。そのため、その土地の文化風習を今なお受け継いでいるのでしょう。

徳島県の葬儀の慣習を紹介

徳島県の葬儀の慣習を紹介

現在の徳島県では、俗信に左右されることなく友引の日でも葬儀がおこなわれることが多いですが、徳島市・鳴門市の火葬場は友引きの日は公休日です。

故人が使っていたお茶碗を出棺前に割ったり、棺をまわしたりといった慣習が、山間部、そして講組の活動が盛んな地域に残っています。

山岳地帯ならではの徳島県には、古くから「もののけ」にまつわる伝承が多くあります。代表的なものが三好市西祖谷山村周辺の、葬儀の際に現れる猫の妖怪の「クワシャ」。その妖怪避けだったのが、故人の胸の上に置かれる刀や鎌などの守り刀の慣習です。

現在ではほとんど見られなくなりましたが、猫にまたがれた死者は成仏できないとの俗信から、通夜の時に部屋の隅に箒を立てかける習わしもありました。

祖谷山村には他に、「野鎌」とよばれる妖怪の伝承もあります。

土葬時代、葬式と墓穴掘りに使用した鍬や鎌はその場に7日間放置する習わしがありました。もしも放置せずにそのまま持ち帰えると、それら道具が野鎌となって禍いをもたらすと信じられていたためです。

また、夜に謎の怪火(メタンガスや地面からの放電現象等)が見られるとそれを狐の葬式と呼んで、死者が出る予兆として忌み嫌われていました。他地域では狐の嫁入りと呼ばれています。

葬儀当日におこなわれるお六日法要

葬儀後に執り行われる追善供養である忌日法要、死後七日目におこなう初七日は、昨今では葬儀当日に行われるのが主流です。

徳島県も例外ではなく、県内には今も死後六日目におこなわれるお六日法要の慣習があり、こちらも繰上げ法要として葬儀当日に執り行われています。

現在のお六日法要は初七日と同じくお経をあげての追善供養が行われますが、本来はこの日に死者に見立てた蓑笠人形を作り、翌日の初七日法要を執り行っていました。

お六日法要に出席した人への引き出物に、赤飯、またはお酒が用いられることが多いです。

お六日の風習|蓑笠人形

お六日の蓑笠人形の風習は、現在でも三好市などの一部地域で時折見ることができます。

死者に見立てたカカシに故人の衣類を着せてさらに蓑笠をつけ、道の端や河原などに立てる風習です。立てかけた人形の足元には、一膳飯や汁椀などが置かれた御霊供膳(おりょうぐぜん)を供えます。

お六日の風習の起源などは不明ですが、翌日の初七日は故人が三途の川を渡る日であり、それを前にしての追善、そして迷って現世に戻ってこないように後押しをする儀式ではないかと考えられます。

その理由として、初七日が終わると蓑笠人形は親族の手で倒されてそのまま放置されますが、後ろ手に鎌や鉈を持って切り倒す、または故人の名前を呼びながら石をぶつけて倒す、どちらも倒した後は決して振り返ってはならないとの決まりごとがあるからです。

死者の未練を断ち切る意味が込められていると言えるのではないでしょうか。

棺に針と糸とハサミを入れる

故人が首から下げるサンヤ袋(頭陀袋)に枕団子やお米・麦・粟など7種類の穀物を紙に包んたものとともに、針と糸とハサミの裁縫道具を入れる慣習が残る地域があります。

冥土の旅の途中で、役に立てられるようにとの思いが込めて行うものです。

この民間習俗は、浄土真宗では取り入れられていません。

野辺送りの慣習が残る|県南地方

阿南市などの県南地方では、出棺前に親族がそれぞれに幟や鉦、ぼんぼりなどを持ったまま棺の周りをまわってから、霊柩車が待っているところまで葬列を組んで歩いていく慣習が時折見られます。


まとめ:徳島県の葬儀で昔ながらの葬送儀礼や慣習が残っているのは風土が大きく関わっている

徳島県は8割が山地で、四国の中でも険しい山岳地帯を擁しています。

人々が暮らすのは徳島平野にある都市部だけではなく、山間にも集落が多いです。

人や物の往来が容易ではない風土の中で暮らすということは、その地域内で生活を完結させなければならず、結果、相互扶助が強い地域社会が形成されることに繋がります。そこではお祭りや同一の信仰などを通して結束を固めているため、祭祀、集落の風習や習慣などが継承されやすいのです。

さらに、山間部に多くの葬送習俗が残っているのは、地形的理由から他地域から人や文化が流入しにくいからといえます。それは葬儀も同じで、葬祭業者の葬儀場がない地域も多く、現在でも講組などの手伝いが不可欠な集落もあります。

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