和歌山県のお葬式|田辺市では友引を避ける?香典辞退など最近の葬儀事情と今も残る慣習を紹介

投稿:2021-01-12
和歌山県のお葬式|田辺市では友引を避ける?香典辞退など最近の葬儀事情と今も残る慣習を紹介

和歌山県には真言宗の総本山でもある高野山があり、その周辺地域には今でも宗派関わらず「骨のぼり」と呼ばれる葬送儀礼があります。

神仏習合の象徴でもある熊野那智大社と三重塔を擁する青岸渡寺がある東牟婁郡那智勝浦町では、前火葬が主流で土葬時代の慣習も見られることも。

しかし、隣組の人々による送り念仏などの弔いが今も残っている地域もありますが、この20年ほどで土葬時代まで続いた葬送習俗の多くが消えてゆきました。

その中でも今なお残る和歌山県内に残る葬送習俗を紹介します。

和歌山県の一般的な葬儀と葬送習俗

和歌山県では後火葬が主流ですが、紀南地方では今なお前火葬(骨葬)をおこなう地域が多く残っています。

また、沿岸部の一部地域では、現在でも自宅や公民館で隣組などの地域コミュニティが葬儀の準備から片付けまでを手伝い、葬儀社を利用しないところもあります。

和歌山県の葬儀と葬送習俗の特徴を解説します。

和歌山県の一般的な葬儀の流れ

和歌山県では一部地域を除き、後火葬が主流です。

通夜の弔問客には通夜菓子が渡されます。なお、通夜振る舞いは遺族と親族のみでおこなわれますが、地域や故人との関係によって通夜振る舞いに招待される事があり、その場合は受けるのがマナーです。

香典袋の水引は関西圏と同じで、葬儀は黒白の結び切りを使い、忌明け後の法要は黄白の結び切りにします。

香典返しはどの金額に対しても一律即日返しが主流で、2,500円~3,000円の品物に会葬御礼状が添えられます。一律とはいえ、高額香典の場合は忌明け後に改めて返礼品等が送られることが多いです。

和歌山県内の土葬事情|紀南地方では葬儀の日に「友引」を避ける

和歌山県では、過去10年以内に県民の土葬が行われた記録が残されていますが、現在ではイスラム教徒専用の墓地でおこなわれているくらいで、土葬はほとんど執り行われていません。

しかし、土葬の風習が残っていた事もあるためか、田辺市などの紀南地方では六曜などの占いに合わせて葬儀の日程を組むことがあり、「友引」を避けることが多いです。

最近では葬儀場や火葬場の混雑を緩和させるために、多くの自治体で友引でも執り行うよう働きかけているため、今後事情も変わってくるかもしれません。

香典辞退は地域との相互扶助の解消?

香典はお互い様の相互扶助精神のあらわれですが、古くからある地域コミュニティにおいては互酬制度の一面もあります。

和歌山県では隣組など、町内会や自治会で中心的に活動しているのは地域の高齢者に多く、その中の誰かが亡くなった場合、その家の中に活動を引き継ぐ子供などがいなければ必然的に地域との関わりも途絶えてしまうのです。それは地域内の香典の互酬制度の引き継ぎができない事を意味します。

他地域では葬儀の簡素化から香典辞退がおこなわれていますが、和歌山県においては過疎化の問題から、地域コミュニティの相互扶助の輪からの一時離脱という意味が含まれているとも言えるでしょう。

満中陰(四十九日)の笠餅と弘法大師信仰

満中陰(四十九日)の笠餅と弘法大師信仰

和歌山県といえば弘法大師が開山した高野山真言宗 総本山金剛峯寺、通称・高野山のお膝元。ここから笠餅を弘法大師に見立てていただく慣習が生まれました。

笠餅とは、満中陰の供物であるお餅のこと。他地域では「傘餅」と呼ばれています。

一枚の鏡餅を49個に切り分ける際、ただ切り分けるのではなく人の形になるように切る独特の慣習です。

最終的に、笠を頂いた巡礼中の弘法大師の姿になります。足の不調を持つ人は足の部分をいただくと治るとの説も。

和歌山県の笠餅は、僧侶に切り分けてもらうのが一般的です。

新宮市・那智勝浦町などの紀南地方は骨葬も多い

前火葬を行う場合、下記二通りの流れがあります。

  • 仮通夜(枕経)→通夜→火葬→葬儀
  • 仮通夜(枕経)→火葬→通夜→葬儀

通夜で僧侶の読経が終わった後に、地域の念仏講とともに遺族と親族が送り念仏をおこなう事もあり、僧侶に代わって念仏講の人たちが葬儀をおこなっていた時代もありました。

本来、納骨は葬儀当日におこなうのが主流でしたが、昨今では葬祭業者による外部からの葬送儀礼が一般化したことにより四十九日と同時に行われることが多くなっています。

また、骨上げ後に地域の和讃講が御詠歌で還骨勧行をおこなうところもあり、日高郡みなべ町では、通夜に御詠歌を詠唱して故人を偲びます。

※御詠歌・・・大和言葉で仏の教えを讃えて節をつけたもの。各宗派にあり、詠唱の際は鈴と鉦を用いる。

土葬時代の慣習である守刀は民間習俗の一つです。死者を魔物や穢れから守るための刀もしくは刃物を棺の上に置く家もあります。

日高郡の一部地域で見られる「願ほどき」

出棺の際に茶碗割り、日高郡の一部地域では包んだお米を屋根に向けて投げる、願ほどきの儀式をおこないます。

願ほどきは、故人が生前にかけていた願い事を解除する呪術で、成就する前に亡くなったことを心残りとし迷ってこの世に戻ってこないようにするための儀式です。

伊都郡・紀の川市など北東部地域に見られる骨のぼり

高野山にある奥之院には、信徒でなくても弘法大師を慕った多くの人が納骨されています。正しくは分骨したものを納めますが、土葬時代は遺髪や爪などを竹筒に入れて納めていました。

そして高野山を擁する伊都郡や橋本市、紀の川市などでは、葬儀の翌日に「骨のぼり」と呼ばれる、高野山へ納骨するための儀式を執り行います。

昔は、故人のお弁当となるたくさんのおにぎりと一足の草履を持ち、天候にかかわらず黒い傘をさして奥之院に向かっていました。

道中、道の角におにぎりを1~2個を置いて進み、水場やお地蔵様のところで草履をかけて休憩します。山に入ると沢で休憩し、小枝で沢の水を骨壷にかけます。これはお茶湯(おちゃとう)と呼ばれる、故人に水を与える慣習です。これを幾度か繰り返して奥之院へ向かうのが「骨のぼり」の儀式。

現在は車で直接行けるため、家を出る前に骨壷に樒で水をふりかけるお茶湯の儀式を行い、小さな骨壷を首にぶら下げて奥之院へと向かいます。

途中で身内の家などに立ち寄ってお茶湯を受けながら車を走らせますが、中にはこまめに車から降りてはおにぎりを備えてお茶湯をおこなう昔ながらの方法を大切にする人も。

骨のぼりの途中、ドライブインに立ち寄ると故人に対してもお茶が出されます。それだけ地元の人々にとって、馴染みのある慣習なのでしょう。

まとめ:和歌山県の昔ながらの葬儀習俗は火葬文化の普及から失われつつある

和歌山県はかつては土葬文化であり、葬儀と葬列の準備など、多くの人の手を借りなければ執り行えませんでした。

しかし火葬時代になるとすべて葬祭業者で完結してしまうようになり、これまで隣組などで継承されていた葬送儀礼が失われつつあります。

それでも高野山を擁する和歌山県では、宗派が持つ慣習はそれぞれの家で受け継がれて今なお執り行われいています。

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著者:葬儀のデスク編集部
葬儀のデスク編集部
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