大分県の葬儀の特徴と神仏習合発祥の地・六郷満山周辺の葬儀習俗

大分県の葬儀の特徴と神仏習合発祥の地・六郷満山周辺の葬儀習俗

大分県の葬儀の特徴の一つに、基本費用が九州の中でも二番目に安い事があげられます。しかし葬儀における飲食費と返礼品の費用は、総人口が約5倍近くもある福岡県よりも高めです。

そして大分県は神仏習合の文化を持ち、その発祥地である六郷満山の東側に位置する国東市では、葬儀の時にそれをはっきりと意識させられます。

大分県内でも異なる葬送儀礼マナー、さまざまな葬儀習俗を紹介します。


大分県全域に見る葬儀の特徴

大分県内の市町村は隣組(勝俣班)の制度が地域に根ざしている所が多く、葬儀の手伝いをおこないます。

津久見市では勝俣班、他地域では無常組(葬式組)が遺族と親族に代わって精進料理作りなどのお台所仕事から葬儀における裏仕事を担うのです。

最近では葬儀社によるホール葬や家族葬を選ぶ家が増え、隣組は給仕や受付・案内のみとなってきました。葬儀社に全て任せる場合もあります。

大分県では一般弔問者への通夜振る舞いが無くとも、親族と葬儀を手伝う人たちを手厚くもてなします。通夜振る舞いは手伝ってくれた人たちのためにあると言っても良いでしょう。

香典に包む金額が福岡県よりも多い傾向にあり、また、香典返しも半額返しが主流である事と隣組の制度がある事で、飲食と返礼品の費用が高くなっています。

※勝俣班・隣組
勝俣班・隣組とは、町内をさらに細かく組み分けしたもの。組単位での相互扶助です。一つの組みの中に何十軒かが入っており回覧板を見るとわかります。
より良い生活のための町の自治や美化、冠婚葬祭な どの行事に組として関わるものです。

敷米料|大分県特有の寺院への御礼

敷米料は大分県に古くからある風習で、葬儀後にお布施とは別に包んでお寺に渡します。

かつてこの地域には、食品、お米などを香典として渡す習わしがありました。米俵の数が家の規模を象徴するものでもあったため、親族たちは家の威信をかけてこぞって持参したといわれています。長崎県壱岐では式米、中部地区から関東では一俵香典(いっぴょうこうでん)と呼ばれています。

筵(むしろ)の上に集まった米俵を置き、その上に棺を安置。そこに氏名を書いた紙を貼り、いくつかは寺院へ寄進されました。

そして現在、祭壇の供物に「敷米料 壱万圓」などと書いた紙を貼り、葬儀後に寺院にその金額を寄進しています。

相場は概ね1万~2万円ですが、本州のある地区では高額な敷米料を寄進する人が多発した事で、代々その地に住み昔からの葬儀習俗を遵守してきた人々を困惑させ、人間関係がギクシャクしたことも。

今の時代、香典やお布施金額がご近所に知れる事は良しとしません。

大分県地域別に見る葬儀の慣習

大分県地域別に見る葬儀の慣習

大分県は山と海を持つ豊かな県であり、海側の地域は山口県、愛媛県と高知県に近いことから古来より海上交通によって交流が盛んで、風習も似ています。

たとえば愛媛県宇和島郡の念仏講による葬儀組、大分市の一部地域では初七日に念仏講の人たちが供養に訪れる習わしがあります。そして愛媛県の棺の三回まわしも同様です。

高知県も神仏習合が盛んな地域だったという共通点がありますが、大分県と違って高知県では神道式の葬儀が比較的多いのが特徴。

大分では仏壇と神棚、高知では神棚と弘法大師の掛け軸の組み合わせが多いです。

大分市の通夜には淋し見舞いを持参

大分市では通夜で夜伽をする遺族とその親戚のために、淋し見舞いとしてお菓子や簡単につまめる食べ物や飲み物、その他にもお線香などを差し入れします。

通夜振る舞いは遺族親族とお手伝いの人たちのみでいただくのが通例ですが、時折一般弔問者を誘う事もあります。その場合は断らず、一口だけでもいただくのがマナーです。

また、通夜振る舞いはお別れ膳とも呼ばれることもあります。

同じ中部地域である由布市では、通夜に参列の際は香典とは別に1,000円ほど包んだ通夜見舞いを持参します。

葬儀翌日を三日と言い、近親者によって炒られた玄米に味噌を添えたもの、枕飯・水をからわけ(素焼きの器)に入れて墓前に供える慣習が今も残る地域もあります。

佐伯市では前火葬(骨葬)が主流

大分県内は後火葬が主流ですが、佐伯市の一部沿岸部では前火葬が通例です。

佐伯市は山の幸にも恵まれた、大分県随一の水産業が盛んな都市です。骨葬は雪深い寒冷地のみならず、漁港を持つ町でもよく見られます。

出棺前に門火を焚く|宇佐市

出棺の際、反時計回りに棺を三回まわします。その際、門の角で送り火となる門火(かどび)を焚く事もあります。

門火は他地域にも見られる習わしですが、故人が煙を目印に戻ってくるのを防ぐために煙を蓋などで覆い隠します。しかしこの地域の門火は浄化であるため、覆い隠すことはしません。

棺を回す、または棺の周囲を3回まわる理由には様々な諸説がありますが、現在通説となっているのが故人の魂が戻ってこないようにするためです。

仏教での三回まわりは、対象物を中心に左から右にまわるのが通例。

お釈迦様を火葬しようとしても火が点かず、そうしている内に遅れて到着した弟子が最期のお別れに薪の上に置かれている棺の周りを三回まわって礼拝した途端、炎が勢いよく巻き起こり火葬されたとの言い伝えがあります。そこから死者への最高の礼を尽くす行為として、インドやタイなどでは現在も火葬前におこなわれている儀式です。

この三回まわりを三匝の礼(さんぞう)といい、日本の寺院でも仏教礼拝としておこなわれているものです。棺回しが三匝の礼とは逆回りなのは、葬儀における逆さごとではないかとの説もあります。

葬儀の特徴

この地域での通夜はお茶とお菓子で弔問客をもてましますが、場合によっては通夜振る舞いをおこなう事も。他にも通夜に訪れた人に、通夜返しとしてお茶や砂糖を渡す事もあります。

前お斎|国東半島北部沿岸部

国東半島は両子山を中心に放射状に広がった地形であり、山岳信仰(古神道)に仏教が合わさった神仏習合の発祥でもある六郷満山文化を持つ地域であります。神社と並んで重要無形民俗文化財に指定されている修正鬼会(しゅじょうおにえ)をおこなう成仏寺、鳥居を持つ両子寺など、天台宗の寺院が多いのが特徴です。

そして北部沿岸部の中津市では、繰上げ法要が行われる事が増えた事で、お斎(精進落とし)を葬儀開始前にいただく「前お斎」が主流となっています。

国東市は仏壇と神棚の両方を持つ家が多い

神仏習合のルーツである国東半島、特に国東市では同じ屋根の下に仏壇と神棚を持つ家が多い事で有名です。仏式の葬儀であっても、白い紙を貼って神棚封じをおこないます。

無常組(葬儀組)がある地域では、精進料理などの葬儀の準備を手伝います。親族であっても台所仕事は一切手伝わせません。

葬儀社など無かった時代は、無常組の組長がいわゆる葬儀委員長となって会場の設営から葬列の順序まで取り決めていました。

野がえり、葬儀を終えて帰宅した際は、手に塩を付けて水で洗い流してから中に入り、その後の精進上げでも無常組が給仕します。

五十回忌の弔い上げでは、花シバの木(シキミ)を卒塔婆がわりにして戒名を書き、お墓の後ろに植えます。

豊後高田市の市民は火葬場の使用料が無料

2020年4月より、豊後高田市では市民の負担軽減のために市営火葬場の市民の使用料を無料としました。(12歳以上12,000円が無料)
※愛知県安城市と岡崎市、兵庫県加古川市なども無料

ちなみに九州の主な市では、

  • 大分市・平戸市5,000円
  • 福岡市20,000円
  • 佐賀市6,500円
  • 熊本市6,000円
  • 宮崎市12,000円
  • 鹿児島県9,000円

となっており、福岡県の使用量が最も高いです。

しかし国民健康保険加入者であれば、たとえば福岡市の場合は30,000円の葬祭費が支給されるので、実質負担はありません。

豊後高田市では20,000円の葬祭費をすべて葬儀に充てる事が出来るので、葬儀にかかる費用が軽減されました。


まとめ 大分県の葬儀では地域の班長や組長が葬儀委員長になって、喪家をサポートする習わしが残っている所がある

大分県内の葬儀社は地元密着型が多く、一般的な葬儀儀礼を押し付ける事なく遺族が属する勝俣班との連携でアットホームな葬儀を執りおこっています。

時代は変われども、地域の相互扶助精神は今も変わらず存在しているのが大分県です。                  

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