福井県のお葬式は廻り焼香など独特の葬儀の慣習を持つ|嶺北と嶺南で異なる葬送文化

投稿:2021-12-27
福井県のお葬式は廻り焼香など独特の葬儀の慣習を持つ|嶺北と嶺南で異なる葬送文化

福井県は福井市などの嶺北地方(越前)と、敦賀市や小浜市などの嶺南地方(若狭)の二つの地域に大きく分けられます。福井弁と関西弁、方言と同じく宗派も嶺北は浄土真宗、嶺南は真言宗と禅系に分かれており、異なる葬送文化を持つのが特徴です。

福井県には独特の慣習には、焼香を済ませた人から帰ってゆく廻り焼香、前を向く会葬者の背後からおこなわれる喪主の挨拶などがあり、他地域の方はとても驚かれます。

地域ごとに今も受け継がれている慣習など、福井県の葬儀を紹介します。

福井県の葬儀の特徴

福井県では、会葬者が葬儀場の受付で記帳することはほとんどなく、受付担当の人がまとめておこなうのが一般的です。

長寿で亡くなった人の葬儀では赤飯が振舞われる地域が多く、古くは江戸時代にはその慣習があった記録も残されています。

同じ宗派・信仰で組まれた講中、町内をさらに細かく組みに分けて自治活動をおこなう隣組などの地域コミュニティとの関わりが強い地域であり、葬儀の会葬者数も比較的多い県です。

昔ながらの葬送儀礼を重んじる傾向が強く、現在でも夜伽で故人と枕を並べて寝たり、「仮通夜ー本通夜ー葬儀」を省略せずに行ったりと、昔ながらの葬送儀礼を行う地域も。

福井県は嶺北地方と嶺南地方とで文化風習が異なり、茶碗割りなどの民間習俗は主に嶺南地方によくみられます。

通夜で渡す手土産の「淋し見舞い」の慣習がある

福井県には、「淋し見舞い」の慣習があります。淋し見舞いとは、通夜を過ごす遺族を思って渡す手土産のことです。

かつては弔問の際に香典とともにお米や野菜を遺族に渡していましたが、高度経済成長期あたりから物から現金へと変わってゆきました。

ただし、漁村地区では昔から相互扶助の精神で現金を渡します。

 越前地方の淋し見舞いは、親族がおこないます。

嶺北地方では主流・嶺南では葬儀の簡素化と廻り焼香への疑問

葬儀中であっても、焼香を済ませたらそのまま帰るのが「廻り焼香」と呼ばれる慣習です。特に、会葬者数が数百人単位となることも多い福井市など嶺北地方では一般的でした。以前は嶺北のみの慣習でしたが、嶺南地方でも浸透しつつあります。

しかし、葬儀は故人のための儀式としての位置付けである嶺南地方では、お焼香だけしてすぐに帰る廻り焼香では弔いにならないのでは・・・?と、違和感を覚える人も少なくありません。

指名焼香が行われないと不評を買う?

「指名焼香」は社葬など大きな葬儀の際に、その会社の代表、自治体の長や議員などの立場ある人が一般会葬者に先駆けて焼香を行うことです。会場では前列に座り、名前を呼ばれたら順に焼香をします。

一般の葬儀においても、故人の勤め先の社長や町内会の長、親戚なども含めた指名焼香がおこなわれることも。

福井県でも指名焼香が一般的でしたが、時間がかかる葬儀は現代の生活様式には合わないこともあり、近年ではおこなわれないことも増えてきました。

また、焼香順を巡って後々遺恨になることもあり、指名順を決めるのは遺族にとって負担でもあります。

しかし、指名を受けることをステータス、または指名焼香がおこなわれない葬儀を手抜きと考える人が家族や親族の中にいる場合は例外です。

荼毘に付している間に仕上げ(精進料理)を済ませる

福井県では火葬の合間に、仕上げ(精進料理)が振る舞われることが多いです。

火葬場へは僧侶も同行し火葬炉の前での納め式を終えると、再び一同は葬祭場に戻ります。そして僧侶、親戚や葬儀の手伝いをおこなった人たちに、お礼の仕上げ料理が振る舞われます。

会食終了後、引き出物を渡して解散です。

骨上げは決められた数人が代表として行う 

収骨は全員が立ち会うのではなく、あらかじめ決められた数名のみがおこなうことが多いです。

また、浄土真宗のみならず曹洞宗などでも喉仏を大本山に納骨する人が多いため、分骨もよくおこなわれています。

葬儀における慣習

  • 出棺前に故人愛用の茶碗を割る
  • 門火を焚く
  • 耳塞ぎ餅

耳塞ぎ餅とは、子供が亡くなった場合、出棺前に同年の子供たちの耳に平らな餅をあてて呪文を唱える慣習のこと。死者の声が耳に届いて連れて行かれないための民間習俗です。

現在ではほとんど行われず、ご高齢の方のみが知る慣習となってしまいました。

「チンドンジャン」葬儀と法要は手厚く

昨今、葬儀の簡素化は儀式にまでおよび僧侶がいないお葬式も珍しくはありません。しかし、福井県では葬儀の規模を縮小したとしても、葬送儀礼を省略することを良しとしない風潮があります。

「チンドンジャン」に集約される、鳴り物を派手に鳴らしながら7~9人の僧侶が執り行うのが曹洞宗の伝統的な葬儀ですが、葬儀の簡素化で他地域では僧侶の数を2~3人までに減らしているのが現状です。

しかし福井県では大本山永平寺のお膝元という理由もありますが、寺院との結びつきの強さ、他宗派含めて宗儀を大変重んじる傾向が強い地域であるため、従来通りの葬儀を希望する檀家が多いです。

明治時代の廃仏毀釈運動が推し進められた中、鹿児島県とは対照的に民衆が激しい抵抗を見せたのが福井県、中でも浄土真宗の門徒が多い嶺北地方でした。

熱心な信者が多いことと、仏教=葬式の認識のみの人であっても、いざ葬儀を出す側となると手厚く見送ることを望むのでしょう。

お寺、仏教文化が人々の暮らしの中に根付いているのが、福井県の特色ともいえます。

 
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著者:葬儀のデスク編集部
葬儀のデスク編集部
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